乳腺外来で、良性のしこりで、経過観察しましょうと言われました。

職場の検診で、乳腺超音波検査を受けていただくと、様々な良性疾患が見つかります。嚢胞、線維腺腫、乳管内乳頭腫…乳腺超音波検査は、放射線の被曝もなく、お若い方で、乳がんの早期発見につながることも、時としてありますが、残念ながら、超音波検査機器の精度が良くなりすぎたこともあり、たくさんの良性疾患が見つかってしまいます。腫瘍として見つかるものの代表的なものに『線維腺腫』が、あります。この良性腫瘍は、20~30代に発生し、閉経すると、しぼんで消えてしまう、良性腫瘍です。線維腺腫と診断された場合に切除する必要は、ありません。紛らわしい疾患として、葉状腫瘍といって、良性なのですが、成長し続けてしまう良性腫瘍があります。この葉状腫瘍は、困ったことに、良性、悪性の境界が曖昧で、時に急激に大きく成長してしまうことがあります。さらに困ったことに、腫瘍の一部を採取して顕微鏡で検査(病理診断)をしても、線維腺腫と、葉状腫瘍の区別をすることは、とても難しい事なのです。病理診断で、区別が難しいと初めて聞いたときには、耳を疑ってしまいました。線維腺腫と診断されても、まれに紛らわしいものがあるため経過観察し、一般的には、おおきさが3cmを超えた場合は、丸ごと腫瘍を切除して、病理診断を行います。40歳以上で、初めて、線維腺腫と診断された場合も要注意です。

通常、この線維腺腫は、正常乳腺と硬さが変わらないため、超音波検査をうけるまで、自覚されないことがほとんどです。妊娠期に増大したり、閉経前に、硬くなって自覚されることがあります。

2014年8月24日

何年も前から胸にしこりがあるので、乳がん検診を受けに来ました。

何年も前から胸にしこりがあって、一度かかりつけ医に触診してもらって大丈夫と言われたたので、それ以来診察を受けていません。最近、乳がん検診の案内がきたので、思い切って検診を受けに来ました。

外来で、良く耳にする内容です。病脳期間といって、症状に気づいてから、受診までの期間が何年にもなってしまうのが、乳がんの特徴で、これは、多くの乳がんの成長が、最初のうちは、とてもゆっくりだからです。多くの乳がんは、1個の細胞から1cmのしこりになるのに、10年かかると言われています。

『気づいてから何年もずっと変わらないから大丈夫』  何年も悩まずに、乳腺超音波検査の受診をお願い致します。触知するしこりの悪性、良性の判定は、乳腺超音波検査(エコー)が得意とします。

さまざまな症状や検診結果によって、お勧めする検査内容がことなりますので、お気軽に乳腺外来に、ご相談ください。

エコー検査

2014年6月24日

検診で、乳腺症と診断されました。このまま放置しておいて良いのでしょうか。

乳腺症の症状

生理後も、乳腺全体が硬く張ったかんじで、ところどころにしこりのようなでこぼこが触知されます。片側のごく一部分にのみ、しこりとして触知されるような事もあり、かなりの強い痛みを伴う場合もあります。

乳腺症の原因

乳腺症は、女性ホルモンの働きかけが強くなって乳腺組織が授乳準備中のように張った状態です。外来では、『ホルモンバランスがアンバランスとなり、乳腺がむくんだ状態』と説明しています。『状態』と表現されるように、通常は、一時的な変化ですが、ホルモンバランスが安定しても、このごろごろがとれるのに、2-3ヶ月かかってしまいます。異動や引っ越しなど環境の変化する季節に多く見受けられ、育児や仕事による寝不足ですとか、脂肪分、カフェインの取りすぎも誘因と考えられてます。

乳腺症と診断されたら

かつて10年以上前は、乳がん検診といえば、視触診のみで、多くの方が、視触診で『乳腺症』と診断され、不安を感じたことと思います。人間ドックの乳腺超音波検査(エコー)でもしばしば、この『乳腺症』と診断されます。超音波で乳腺組織は、黒と白がまだら模様の斑紋状構造として描出されますが、このまだらな黒い部分の面積が多いときに『乳腺症』と判断します。がんを見つけるための検査ですので、わざわざ良性所見を記載する必要は、ないのですが…

乳腺症があるからといってがんの発生する確率が増えたりすることはありませんが、がんのしこりをご自分で見つけるのが多少難しくなります。

乳腺症の治療

治療として、症状が激しい場合は、薬物療法を行うこともありますが、通常、上記のようなストレスが軽減し、ホルモンバランスが改善すれば症状は、徐々に軽快していきます。あくまで疾患ではなくて、一時的な状態と考えてください。

『現代外科学大系』

余談ですが、いまから40年以上前に発行された『現代外科学大系』という当時の外科のすべてを網羅した教科書には、50ページ以上にわたってこの『乳腺症』について解説されており、診断・治療に苦労していたことを、うかがい知ることができます。

症状は無いけれども、乳がん検診を受けたいのですが。

40才以上のかたには、マンモグラフィ検診をお勧めします。職域、自治体のマンモグラフィ検診も利用しましょう。しこりなどの症状がある方は、乳腺外来(乳腺外科)を受診しましょう。

 2014年春に、国立がん研究センターより「有効性評価に基づく乳がん検診ガイドライン」確定版が公開され対策型検診(市区町村が行う住民検診)について推奨項目が下記のようになりました。

 推奨される検査内容

 ① 40歳~64歳 マンモグラフィ単独、もしくは、視触診併用

 ② 65歳~74歳 マンモグラフィ単独(視触診なし)

 推奨されない検査内容

 ① 40歳未満 マンモグラフィ(±視触診併用)

 ② 超音波検診 (単独・マンモグラフィ併用)

超音波に関して現在40歳代での有効性が検証されている段階です。

この、ガイドラインを受けた、最終的な厚生労働省からの指針が待たれています。

2014年6月24日

職場で乳がん検診を受診する機会があるのですが、北区乳がん健診を受けても良いのでしょうか?

毎年、職場の検診で乳腺エコー検査を受けていますが、北区の乳がん健診を受けても良いかどうかといったお問い合わせを頂く事があります。職場の検診で、マンモグラフィ検診を受診して、問題無いのであれば、さらに北区の乳がん健診を受診する必要は、ありません。40歳以上で、職場の検診で、乳腺エコーしか受診されていない場合は、北区のマンモグラフィ検診受診をお勧め致します。

2016年3月1日