お勤め定年まで、全く病気をしたことがないし、がん家系では無いので、がん保険の解約を考えていると、ご相談を受けたことがあります。
みなさんは、がんの好発年齢をご存知ですか?胃がん、大腸がん、肺がんといった内臓のがんは、実は、リタイアされた60歳以上も好発年齢となっています。お勤めされていらっしゃる間は、毎年欠かさず受けていた、胃のバリウム検査や便潜血検査も、職場をはなれるとすっかりご無沙汰になってしまいますね。特に消化器系のがんは、全く症状が出ないのが特徴です。あるとしても、とてもがんが進行してからの貧血です。病院嫌いの、顔色が冴えない60、70歳のご家族がもしいらっしゃいましたら、早めの病院受診を勧めてください。
もうひとつ、好発年齢についてですが、乳がんは、40歳から、子宮頸がんは、20歳代後半からが好発年齢となっています。社会において、家庭において大切な役割を担う世代の、これらのがん検診受診率が低いことを受けて、『女性特有のがん検診推進事業』が、平成21年度からはじまりました。乳がん、子宮頚がん検診クーポン配布は、平成27年度で、終了となる予定です。是非、この機会に、クーポン利用をおすすめします。
残念ながら、いずれの腫瘍マーカーも、乳がんを見つけることに、役立ちません。
CA15-3、CEAといった、腫瘍マーカーが乳がんの転移・再発後に上昇することがありますが、乳がんを見つける検査は、マンモグラフィと超音波検査(エコー)です。
乳がんの手術を10数年前に受けました。乳がん検診を受けたいのですが、どうしたら良いでしょうか。
術後10年ほど経つと、治療した主治医から、そろそろ今後は、検診でみてもらって下さいと言われることがあるようです。治療と経過観察が一段落している状況であれば、自治体の方針にもよりますが、どうぞ、遠慮なさらずに、通常の自治体の乳がん検診で、マンモグラフィ検査を受けてください。乳がんの術後に、マンモグラフィ検査を受け続けることにより、新たな対側乳がん発生による死亡率が抑制されることがわかっています。
困ったことに、温存乳腺に生じた乳がんは、マンモグラフィ検査での診断に時として苦慮します。お住まいのお近くに、検診もできる乳腺外科があると良いのですが…
自治体での乳がん検診で、注意書きとして、『豊胸術後の方は、検診を受けられませんのでご了承ください』といった内容の記載を見かけます。これは、シリコンバックなどを挿入している場合は、破損や挿入位置のずれが懸念されるため、通常の乳がん検診では、原則お断りすることになっています。脂肪やシリコン注入の場合は、病変が描出されないことが懸念されるため、その点をご理解いただいて、こちらも原則検診では、お断りしています。
一般的なシリコンバックを大胸筋の下に入れている場合、慣れた撮影技師であれば、シリコンバックを避けて圧迫することにより、撮影可能です。脂肪注入は、注入された脂肪が異物反応で小さな卵の殻のような石灰沈着ができるので、微細な石灰化を捉えずらくなってしまいます。豊胸術後の乳がんを診断、治療する機会が増えてきましたが、豊胸術は、乳がんの発生と関連は、ありません。
エコー検査であれば、いずれの豊胸術でも検査可能ですので、しこりなど自覚された場合は、乳腺外科で、エコー検査を受けることを、お勧めします。
日本乳がん検診精度管理中央機構
豊胸術実施者のマンモグライ検査に係る見解
乳がん検診無料クーポンの配布が2009年度から開始されました。
増加し続ける乳がんによる死亡数を減少させるためには、検診によって乳がんを早期発見し早期治療へとつなげていく必要があります。働く世代の女性支援のためのがん検診推進事業として、40歳から60歳までの5歳刻みにクーポンの配布が始められました。
2014年度は、2009~2012年までのクーポン『未利用者』を対象に配布されました。今回が、対象者への、最後のクーポン配布となりますので是非この機会にご利用ください。 残念ながら、今後クーポン配布は、廃止予定となっています。(→ 2015年度から、40歳を対象に、クーポン配布が継続される予定となりました。今後は、乳がん健診開始の『40歳のみ』に、配布されていくことと思います。)
この無料クーポンに関連して、2点の誤解が生じております。
① クーポン配布が5歳きざみでしたので、乳がん検診を5年ごとの受診と誤解されているようですが、。現在でも乳がん検診は、2年ごと(隔年)での受診が推奨されています。
② 働く世代支援として60歳までクーポンが配布されましたが、70歳でも、80歳でも乳がんは、生じます。特に60歳代でもまだまだ高い罹患率ですので、是非乳がん検診を受診しましょう。
現在、本邦では、女性特有のがん検診事業として、子宮頸がん検診、乳がん検診クーポンが、平成25年度から働く世代の大腸がん推進事業として、大腸がん検診クーポンが配布されています。いずれのクーポンも、社会において、家庭において大きな役割を担う世代の病を早期に発見・早期に治療することによって、日々健やかに過ごしていただける事を願い、実施されております。是非とも、この機会にご利用ください。

マンモグラフィの乳がん検診で再検査・要精密検査となる検査所見の解説です。
【腫瘤】
腫瘍でレントゲンが遮られることによってできる『かげ』をとらえます。悪性腫瘍と良性腫瘍で、そのさえぎりかた、かげのふちどりが微妙に異なることによって、良性悪性を判断します。乳腺をひらたくのばして撮影するのですが、正常な乳腺組織に重なりができてしまい腫瘤と見えてしまう場合があります。分泌物の貯溜した嚢胞も腫瘤としてうつることがあります。
【局所的非対称性陰影】
漢字が並んでいてものものしいですが、ひらたい言葉で表現すると、右と左と見比べてなんか違う部分があるということです。もともと乳腺の左右差は、よくあることですが、レントゲンのさえぎり方があきらかに、左右で異なる部位があるときにこの表現を使います。
【石灰化】
悪性腫瘍に伴う、壊死した細胞内のカルシウムの沈着、もしくは、腫瘍の分泌するカルシウムが沈着した、がんの存在を疑うわずかなサインです。