自治体での乳がん検診で、注意書きとして、『豊胸術後の方は、検診を受けられませんのでご了承ください』といった内容の記載を見かけます。これは、シリコンバックなどを挿入している場合は、破損や挿入位置のずれが懸念されるため、通常の乳がん検診では、原則お断りすることになっています。脂肪やシリコン注入の場合は、病変が描出されないことが懸念されるため、その点をご理解いただいて、こちらも原則検診では、お断りしています。
一般的なシリコンバックを大胸筋の下に入れている場合、慣れた撮影技師であれば、シリコンバックを避けて圧迫することにより、撮影可能です。脂肪注入は、注入された脂肪が異物反応で小さな卵の殻のような石灰沈着ができるので、微細な石灰化を捉えずらくなってしまいます。豊胸術後の乳がんを診断、治療する機会が増えてきましたが、豊胸術は、乳がんの発生と関連は、ありません。
エコー検査であれば、いずれの豊胸術でも検査可能ですので、しこりなど自覚された場合は、乳腺外科で、エコー検査を受けることを、お勧めします。
日本乳がん検診精度管理中央機構
豊胸術実施者のマンモグライ検査に係る見解
しこりがある場合には、乳腺超音波検査(エコー)をお勧めします。しこりの良性、悪性の判断は、乳腺超音波検査が得意とします。しこりと周囲乳腺の境目の状態や、内部の構造といった情報から、良性、悪性の診断をします。嚢胞、乳腺症といった良性所見は、乳腺超音波検査だけでも診断出来ます。
乳腺超音波検査ご希望の場合は、来院前にお電話で検査を予約して頂くことをお勧めいたします。
乳腺外科外来看護師が診療時間内(9:00-1200,14:00-17:00)にご予約承っております。外来混雑時は、折り返しのご連絡とさせて頂きますのでご了承ください。
しこりなどの症状がある場合は、乳腺外来の受診をお勧めしますが、まだまだ、乳腺外来が身近にありませんので、しこりを自覚してから、乳が検診を受診されるかたが現実には、大勢いらっしゃいます。
毎年、職場の検診で乳腺エコー検査を受けていますが、北区の乳がん健診を受けても良いかどうかといったお問い合わせを頂く事があります。職場の検診で、マンモグラフィ検診を受診して、問題無いのであれば、さらに北区の乳がん健診を受診する必要は、ありません。40歳以上で、職場の検診で、乳腺エコーしか受診されていない場合は、北区のマンモグラフィ検診受診をお勧め致します。
40才以上のかたには、マンモグラフィ検診をお勧めします。職域、自治体のマンモグラフィ検診も利用しましょう。しこりなどの症状がある方は、乳腺外来(乳腺外科)を受診しましょう。
2014年春に、国立がん研究センターより「有効性評価に基づく乳がん検診ガイドライン」確定版が公開され対策型検診(市区町村が行う住民検診)について推奨項目が下記のようになりました。
推奨される検査内容
① 40歳~64歳 マンモグラフィ単独、もしくは、視触診併用
② 65歳~74歳 マンモグラフィ単独(視触診なし)
推奨されない検査内容
① 40歳未満 マンモグラフィ(±視触診併用)
② 超音波検診 (単独・マンモグラフィ併用)
超音波に関して現在40歳代での有効性が検証されている段階です。
この、ガイドラインを受けた、最終的な厚生労働省からの指針が待たれています。
乳腺症の症状
生理後も、乳腺全体が硬く張ったかんじで、ところどころにしこりのようなでこぼこが触知されます。片側のごく一部分にのみ、しこりとして触知されるような事もあり、かなりの強い痛みを伴う場合もあります。
乳腺症の原因
乳腺症は、女性ホルモンの働きかけが強くなって乳腺組織が授乳準備中のように張った状態です。外来では、『ホルモンバランスがアンバランスとなり、乳腺がむくんだ状態』と説明しています。『状態』と表現されるように、通常は、一時的な変化ですが、ホルモンバランスが安定しても、このごろごろがとれるのに、2-3ヶ月かかってしまいます。異動や引っ越しなど環境の変化する季節に多く見受けられ、育児や仕事による寝不足ですとか、脂肪分、カフェインの取りすぎも誘因と考えられてます。
乳腺症と診断されたら
かつて10年以上前は、乳がん検診といえば、視触診のみで、多くの方が、視触診で『乳腺症』と診断され、不安を感じたことと思います。人間ドックの乳腺超音波検査(エコー)でもしばしば、この『乳腺症』と診断されます。超音波で乳腺組織は、黒と白がまだら模様の斑紋状構造として描出されますが、このまだらな黒い部分の面積が多いときに『乳腺症』と判断します。がんを見つけるための検査ですので、わざわざ良性所見を記載する必要は、ないのですが…
乳腺症があるからといってがんの発生する確率が増えたりすることはありませんが、がんのしこりをご自分で見つけるのが多少難しくなります。
乳腺症の治療
治療として、症状が激しい場合は、薬物療法を行うこともありますが、通常、上記のようなストレスが軽減し、ホルモンバランスが改善すれば症状は、徐々に軽快していきます。あくまで疾患ではなくて、一時的な状態と考えてください。
『現代外科学大系』
余談ですが、いまから40年以上前に発行された『現代外科学大系』という当時の外科のすべてを網羅した教科書には、50ページ以上にわたってこの『乳腺症』について解説されており、診断・治療に苦労していたことを、うかがい知ることができます。
どうぞ受付でお気軽にご相談ください。乳腺に関する悩みでしたら、まずは、当院『乳腺外科』へ。授乳中の乳腺炎や、豊胸術後に関する事なども、ご相談ください。順天堂大学や近隣の施設と医療連携も行っておりますので、ご希望や必要に応じてご紹介もいたします。
何年も前から胸にしこりがあって、一度かかりつけ医に触診してもらって大丈夫と言われたたので、それ以来診察を受けていません。最近、乳がん検診の案内がきたので、思い切って検診を受けに来ました。
外来で、良く耳にする内容です。病脳期間といって、症状に気づいてから、受診までの期間が何年にもなってしまうのが、乳がんの特徴で、これは、多くの乳がんの成長が、最初のうちは、とてもゆっくりだからです。多くの乳がんは、1個の細胞から1cmのしこりになるのに、10年かかると言われています。
『気づいてから何年もずっと変わらないから大丈夫…』 何年も悩まずに、乳腺超音波検査の受診をお願い致します。触知するしこりの悪性、良性の判定は、乳腺超音波検査(エコー)が得意とします。
さまざまな症状や検診結果によって、お勧めする検査内容がことなりますので、お気軽に乳腺外来に、ご相談ください。