検診で、乳腺症と診断されました。このまま放置しておいて良いのでしょうか。

乳腺症の症状

生理後も、乳腺全体が硬く張ったかんじで、ところどころにしこりのようなでこぼこが触知されます。片側のごく一部分にのみ、しこりとして触知されるような事もあり、かなりの強い痛みを伴う場合もあります。

乳腺症の原因

乳腺症は、女性ホルモンの働きかけが強くなって乳腺組織が授乳準備中のように張った状態です。外来では、『ホルモンバランスがアンバランスとなり、乳腺がむくんだ状態』と説明しています。『状態』と表現されるように、通常は、一時的な変化ですが、ホルモンバランスが安定しても、このごろごろがとれるのに、2-3ヶ月かかってしまいます。異動や引っ越しなど環境の変化する季節に多く見受けられ、育児や仕事による寝不足ですとか、脂肪分、カフェインの取りすぎも誘因と考えられてます。

乳腺症と診断されたら

かつて10年以上前は、乳がん検診といえば、視触診のみで、多くの方が、視触診で『乳腺症』と診断され、不安を感じたことと思います。人間ドックの乳腺超音波検査(エコー)でもしばしば、この『乳腺症』と診断されます。超音波で乳腺組織は、黒と白がまだら模様の斑紋状構造として描出されますが、このまだらな黒い部分の面積が多いときに『乳腺症』と判断します。がんを見つけるための検査ですので、わざわざ良性所見を記載する必要は、ないのですが…

乳腺症があるからといってがんの発生する確率が増えたりすることはありませんが、がんのしこりをご自分で見つけるのが多少難しくなります。

乳腺症の治療

治療として、症状が激しい場合は、薬物療法を行うこともありますが、通常、上記のようなストレスが軽減し、ホルモンバランスが改善すれば症状は、徐々に軽快していきます。あくまで疾患ではなくて、一時的な状態と考えてください。

『現代外科学大系』

余談ですが、いまから40年以上前に発行された『現代外科学大系』という当時の外科のすべてを網羅した教科書には、50ページ以上にわたってこの『乳腺症』について解説されており、診断・治療に苦労していたことを、うかがい知ることができます。

マンモグラフィで石灰化があると言われ不安です。

体のあらゆるところにカルシウムの沈着は生じます。特に乳腺は、乳汁を作るためのカルシウムをつくるぞうきですので、石灰化が良く認められます。マンモグラフィで探すべき石灰化は、がん細胞が壊死したときに細胞内に僅かに含まれていたカルシウム成分がそこに沈着してできる石灰化です。通常の細胞分裂速度では、この石灰化は、きれいに掃除をする細胞で除去されてしまうのですが、あまりにも速いスピードで、がん細胞の死骸ができしまうため、掃除しきれずにたまってしまいます。この、カルシウムをつくる分泌型の石灰化と、壊死による石灰化の鑑別には、多少の慣れが必要です。 僅かな石灰化でしか捉えることが出来ない早期の乳がんは、マンモグラフィでないと見つけるのが困難です。ただし、すべての乳がんに石灰化が生じるわけではありません。

石灰化

2014年6月24日

乳がん検診のマンモグラフィ検査とは、どのような検査ですか?

マンモグラフィ(MMG:Mammography)

マンモグラフィ検査とは、乳房を平たく押さえてレントゲン写真を撮ることに より、乳腺内の異常を調べる検査です。がんの腫瘤そのもの、がんの証拠となる石灰化 、引きつれなどを、見つけ出します。※非触知の早期乳がん発見につながる検査のひとつです

マンモグラフィ検査は、X線を利用します。健康には影響のないX線量ですが、薄くすることでさらにX線被曝を低減できます。 マンモグラフィ検査による被曝が気になることと思いますが、地球上で生活していると、年間に2.4mSVの自然放射線を浴びています。東京から米国までの往復で約0.08mSVの被曝をする事がわかっていますが、マンモグラフィは、1回の検査でこの半分の約0.038mSvの被曝を受けます。むやみに被曝を受けるべきでは、ありませんが、40歳以上の年齢で、マンモグラフィ検査を受けることのメリット・デメリットを考えると、是非、一年おきのマンモグラフィ検診をおすすめします。

このようなレントゲン被曝に関してのご相談を受けるたびに、かつて胃X腺二重造影法を作り上げた先生方の尋常でない被曝のことを、いつも考えてしまいます。

精度管理されたマンモグラフィ

2014年6月24日

乳腺エコーとは、どのような検査ですか?

現在普及している超音波画像診断法は、和賀井敏夫順天堂大学名誉教授によって開発されました。NHKのプロジェクトX『創意は無限なり・超音波診断機エコー』で、ごらんになった方もいらっしゃるかと思いますが、潜水艦を見つけるソナー技術の原理を応用し、組織に当てた反射音波を画像として描出し、体内の異常を発見する技術です。

マンモグラフィと超音波検査とどちらが精密な検査なのかと、よく質問されますが、どちらの検査も、得意な病変、不得意な病変があります。しこりの良・悪性を判断する事は、超音波検査の得意とするところです。超音波検査の最大のメリットは、放射線による被曝のないことです。世界に類のないほど、日本中には、この装置が普及しています。デメリットは、検査担当者の技量、検査機器の質により精度のばらつきが生じてしまう点です。現在のところ、対策型乳がん検診(住民検診)で、乳腺超音波検診は、推奨されていません。その一つの理由は、たくさんの良性病変(嚢胞、繊維腺腫などの良性腫瘍)を見つけることになるが、良性と断定することが難しいため、不必要な検査を受けていただくことになってしまうためです。マンモグラフィ検診で、がんの証拠をとらえるのが時として難しい40歳代での有効性が現在検証されている段階です。

2006年 和賀井敏夫先生は、日本の学術賞として最も権威ある、日本学士院賞を受賞されました。

超音波診断機エコー

NHK『プロジェクトX』制作班 編集

2014年6月24日

症状は無いけれども、乳がん検診を受けたいのですが。

40才以上のかたには、マンモグラフィ検診をお勧めします。職域、自治体のマンモグラフィ検診も利用しましょう。しこりなどの症状がある方は、乳腺外来(乳腺外科)を受診しましょう。

 2014年春に、国立がん研究センターより「有効性評価に基づく乳がん検診ガイドライン」確定版が公開され対策型検診(市区町村が行う住民検診)について推奨項目が下記のようになりました。

 推奨される検査内容

 ① 40歳~64歳 マンモグラフィ単独、もしくは、視触診併用

 ② 65歳~74歳 マンモグラフィ単独(視触診なし)

 推奨されない検査内容

 ① 40歳未満 マンモグラフィ(±視触診併用)

 ② 超音波検診 (単独・マンモグラフィ併用)

超音波に関して現在40歳代での有効性が検証されている段階です。

この、ガイドラインを受けた、最終的な厚生労働省からの指針が待たれています。

2014年6月24日

何年も前から胸にしこりがあるので、乳がん検診を受けに来ました。

何年も前から胸にしこりがあって、一度かかりつけ医に触診してもらって大丈夫と言われたたので、それ以来診察を受けていません。最近、乳がん検診の案内がきたので、思い切って検診を受けに来ました。

外来で、良く耳にする内容です。病脳期間といって、症状に気づいてから、受診までの期間が何年にもなってしまうのが、乳がんの特徴で、これは、多くの乳がんの成長が、最初のうちは、とてもゆっくりだからです。多くの乳がんは、1個の細胞から1cmのしこりになるのに、10年かかると言われています。

『気づいてから何年もずっと変わらないから大丈夫』  何年も悩まずに、乳腺超音波検査の受診をお願い致します。触知するしこりの悪性、良性の判定は、乳腺超音波検査(エコー)が得意とします。

さまざまな症状や検診結果によって、お勧めする検査内容がことなりますので、お気軽に乳腺外来に、ご相談ください。

エコー検査

2014年6月24日

胸にしこりがあるのですが、どういった検査がおすすめですか。乳がん検診を受けてもいいのですか?

 しこりがある場合には、乳腺超音波検査(エコー)をお勧めします。しこりの良性、悪性の判断は、乳腺超音波検査が得意とします。しこりと周囲乳腺の境目の状態や、内部の構造といった情報から、良性、悪性の診断をします。嚢胞、乳腺症といった良性所見は、乳腺超音波検査だけでも診断出来ます。

乳腺超音波検査ご希望の場合は、来院前にお電話で検査を予約して頂くことをお勧めいたします。

乳腺外科外来看護師が診療時間内(9:00-1200,14:00-17:00)にご予約承っております。外来混雑時は、折り返しのご連絡とさせて頂きますのでご了承ください。

しこりなどの症状がある場合は、乳腺外来の受診をお勧めしますが、まだまだ、乳腺外来が身近にありませんので、しこりを自覚してから、乳が検診を受診されるかたが現実には、大勢いらっしゃいます。

乳腺超音波検査

2014年6月24日